コンピュータ断層法(computed tomography:CT)は、X線を用いて人体を薄く輪切りにした画像(断層像)を撮影する装置である。基本的には通常のX線画像と同じで、人体を通過する際に生じるX線の減弱を画像化したものである。通常のX線画像と異なる点は、X線が通過する際に、人体の各部位で減弱した数値をコンピュータで計算して断層像を構築することである。」
湯浅賢治:コンピュータ断層法(CT). 古本啓一・岡野友宏・小林馨編:歯科放射線学 第4版 医歯薬出版、2006. pp.122-129.p.122
「CT装置は、X線管とX線検出器(人体を透過したX線を検出する)を収めたガントリー、患者を乗せるテーブル、装置を制御する操作卓および画像を構成するコンピュータシステムからなる。CT装置は、開発された順序やX線管と検出器の配列により第1世代から第5世代に分類される。この分類は、人体を透過したX線強度を収集する方法の違いを表すものでもある。第4、5世代は実用機としてはあまり用いられておらず、現在の主流は第3世代である。第3世代のCTはさらに開発が加わり、最近では、管球が連続回転を行うとともに、テーブルも連続して移動する方式がとられており、被写体がらせん状にスキャンされるため、らせんCT(ヘリカルCTまたはスパイラルCT)と呼ばれている。また、らせんCTに加えて検出器を多列にすることにより、一度に広範囲の撮影を行うMulti Detector CT(MDCT)が主流となってきている。CT撮影はより高速化している。」
湯浅賢治:コンピュータ断層法(CT). 古本啓一・岡野友宏・小林馨編:歯科放射線学 第4版 医歯薬出版、2006. pp.122-129.p.122
「CT像は、人体の内部構造のX線吸収値の分布データを画像化したものであるが、表示画像の最小画像単位をピクセル(pixel)と呼ぶ。あるCT値をもったピクセルの集まりにより、CT像は形成されている。しかし、CTではスライス厚があるため、CT像のCT値についてはピクセルだけの2次元的ではなく、スライス厚を加えた3次元的なボクセル(voxel)という考えが必要となる。CT像はピクセルのCT値の集合体であるが、そのピクセルのCT値はボクセル内にある種々の組織の減弱係数の平均値がCT値として表される。ボクセル内が単一の組織のみである場合は問題ないが、ボクセル内に複数の組織がある場合、ピクセルに表されるCT値は、特定の組織の密度を表さなくなってしまう。このような現象を部分容積効果と呼ぶ。」
湯浅賢治:コンピュータ断層法(CT). 古本啓一・岡野友宏・小林馨編:歯科放射線学 第4版 医歯薬出版、2006. pp.122-129.p.124
図:p.125 図3-8-5(改変)
「ボクセル内に複数の組織が含まれている場合、それらの組織のCT値の平均した値がピクセルのCT値となる。このことを部分容積効果(partial volume effect)と呼ぶ。つまり部分容積効果により、CT像に示されるCT値が不正確なものとなる。代表的なものは、種々の組織が隣接する部分であり、組織の境界が不明瞭となる。また、小さな組織は、周囲の組織に平均化されてしまい、抽出されない場合がある。CT診断を行ううえで、部分容積効果の理解は非常に重要である。」
湯浅賢治:コンピュータ断層法(CT). 古本啓一・岡野友宏・小林馨編:歯科放射線学 第4版 医歯薬出版、2006. pp.122-129.p.125
図:p.125 図3-8-6(改変)
「参考文献」
湯浅賢治:コンピュータ断層法(CT). 古本啓一・岡野友宏・小林馨編:歯科放射線学 第4版 医歯薬出版、2006. pp.122-129