サポタくんBSの開発のきっかけは、訪問歯科診療で活動されている歯科医師の先生方からの、車いすや家庭用いすに使える補助装置開発依頼でした。口腔と全身の健康との関係が指摘される中、平成19年に歯科3団体で作成された歯科医療機器産業ビジョンが、厚生労働省の新医療機器・医療技術産業ビジョンに反映され、歯科関連としては初めて訪問診療に関する記述が加えられました。こうした動きに乗り、訪問歯科診療の器材としてサポタくんBSの開発がスタートしました。
開発担当者が訪問歯科診療の実態を把握するために、介護施設を訪問させていただきました。そこには、車いすのヘッドレストが無いため姿勢が不安定な患者さんや、そのような患者さんを辛い姿勢で支えながら診療する先生やスタッフの姿など、厳しい訪問歯科診療の現場がありました。不安定な姿勢により患者さんと先生双方の身体的負担が大きいうえ、診療のための器材は多くかさばり診療現場への持ち運びも一仕事です。そこで、わたしたちは、「軽く」「コンパクトで」「持ち運びしやすく」「簡単な」体位補助装置をつくり、患者さんおよび、先生方の身体的負担と心理的負担を軽減したい!と考えました。
車いすに設置して手軽に使えるように、体位補助装置の大まかな形状は決まりましたが、サイズが大きく「コンパクトで持ち運べる」という点では問題が残りました。そこでヒントとなったのが社内にあった「折りたたみの杖」でした。これは、4つのパイプの中にゴムが入っていて、継ぎ目をひっぱって折りたためばとても小さくなり、この機構を活かせないか?と試作を繰り返しました。
探し続けていれば、案外身近なところにアイデアは潜んでいるようです。
折りたたみ杖バージョンの体位補助装置の試作品を持って先生にお見せしたところ、「面倒くさい」との厳しい声。確かに、現場では他にも器材がたくさんあり、「準備する」ということも訪問診療の普及の妨げになっていると感じました。また、この試作には継ぎ目が多く、安全性でも不安が残りました。どれくらい「コンパクト」だったら持ち運べるか、広げる手間はどれくらい「簡単」か、そして、製品としてもっとも重要な、「安全」に使用してもらえるか。その折り合いをつけるため試行錯誤を繰り返し、現在の2つ折りで、広げた時にロック機構をつける形になりました。