2002年ファイバータイプのオペレーザーLite発売、ファイバータイプでありながらオペレーザーシリーズとしての臨床を可能にするため蒸散・切開性を追求したLiteは、コンパクト性も受けて予想以上に売れていた。一方ヨシダ伝統のマニピュレーター(当社では縮めて「マニピ」と呼んでいます。)はオペレーザー03Sシリーズとして1994年の03S以降、03SII、03SIISPと進化を続けてきた。
しかし自社製品のコンパクトなファイバータイプのLiteが好調に売れると本体サイズが大きい。本体が重く衛生士が移動させるにも大変等々・・・。営業マンからの03SIISPに対する不満が溜まっていた。
蒸散・切開性の追求したLiteであったが、あらためて03SIISPを触ると、マニピで導光されたビームのシャープさは歴然であり、目の覚めるような切開・蒸散性能に気持ち良ささえ感じる。レーザー光の質を感じながら、「やはりマニピはこんなに使いやすいのに・・・広く先生に使ってもらいたい。」と感じていた。
Lite(ファイバー)と03SIISP(マニピュレーター)の導光方式による違いは何か?
Liteはファイバータイプのため見た目に操作感が良さそうに見える。実際、ソフトな使い方では非常に使いやすい。しかしハードな使い方になるに従い、スポット径が大きい、焦点深度が少ない等、マニピより難しくなってくる。
一方03SIISPのマニピタイプは、自由度が少なそうで使いにくそうなイメージ。だが、診療時に必要な動きは限られているので、本体配置ポジションが決まってくると、スポット径のサイズ、適度な焦点深度、共に良いフィーリングであり初心者でも使いやすい。マニピュレーターの使いにくいイメージを少しでも払拭できる事ができれば・・・。
レーザー光の質にこだわるマニピを復活させること。
すでにオペレーザーLite開発中(2001年)に、ファイバータイプは「Lite」マニピュレータータイプは「PRO」というシリーズの構想があった。
しかし、「PRO」と言うからには今までのマニピにないハイクオリティーな物を、使いやすいというだけでなく、ヨシダのマニピユーザーに満足してもらえるレーザー装置を作らなければならない。
以上からマニピがNo.1であるために、3つの事が決まった。
1.マニピュレーターが使いやすいこと
2.コンパクトでスタイリッシュであること
3.レーザー光の質の追求
従来はアルミのパイプを使用していたが、パイプのたわみにより先端チップを十分生かせるほど精度が出せなかった。そこでより硬い素材を探したが、金属を使用すると強度と共に重量も増えることから、金属では不可能と判断。コストは大幅にUPするが素材からこだわりカーボンにすることにした。
※カーボン素材は比重が1.7で軽く、強度がある素材である。
(比重はアルミ:2.7 鉄:7.9)
カーボン繊維自体は引っ張り強度では鉄の2倍以上ある。
この素材は、繊維を樹脂で固めた複合物で、繊維の構成によって特性を大きく変えることができる。
例えば、パイプの円周方向に巻く量を多くすれば、径方向のつぶしに対し強いパイプができ、逆に長手方向に多く巻くとたわみにくいパイプができる。よく見かけるクロス地の物は縦、横方向に50%ずつの強度配分と云うことになる。
今回は縦方向に繊維を多く取り、たわみ難くする設計とした。結果、パイプは縦方向の強度は鉄並で有りながら重量はアルミ並になった。
カーボン素材の採用で、外径も従来Φ20からΦ17とスリムにしても、強度アップによって精度が上げられた。
ついに先端チップを生かせるレベルまで到達した。
デザイン部から上がってきたデザイン画は、今までに無い斬新な物であった。
だが、これは作れるのか?機械設計者から見たデザインの理想は、とても無理があった。
デザインの主張は有機的な曲線のスリムな物で、表面はハンドピース先端まで均一な艶のある処理。どう見ても表面の3次元形状は型を起こさないと実現できない。
関節のブロック形状はダイキャストという案もあったが、塗装は剥げや傷の問題、カラーアルマイト処理は色が出ない加工現場でも精度を出しにくい、といった様々な問題からブロック形状は機械加工できる形状を再検討。
しかし、均一感を出すために、金属部分はアルミ材でアルマイト処理、パイプの部分だけ材料の違いもあり、アルマイトに近い色の塗装とした。デザインの理想に近づけるべく、連日、構造と形状検討、茨城工場との加工形状打ち合わせが続き、最終的に三ヶ月以上の時間が費やされた。
また、カラーのアルマイトの色は染色する顔料の分量、浸ける時間だけでなく処理を行う部品の大きさによってアルマイト自体の処理の時間で変わってくる。生産技術部門の協力おかげで、各パーツそれぞれの時間を出し、管理することで、なんとか色を揃えることができた。
※アルマイト:アルミニュームの表面処理で陽極酸化皮膜。
(希硫酸の中で電気を掛けることで作る皮膜)
表面に目に見えない細かな穴がある為、染料に漬けることで着色できる。
各診療ポジションでマニピュレーターの角度を調査、あるポジションでマニピが口腔に届かないという問題があがっていた。
「届くようにする」事と「製品をコンパクトにする」と云う相反する問題をはらんでいた。
3次元CAD上でのシミュレーションと試作品の検討で、長いパイプと短いパイプの長さのバランスが重要であることが解った。さらに本体が小さいので先生のそばに寄せられる事でクリアできることができた。
次にバネのバランス機構の検討を行った。大きな重りを無くすことで、すっきりするだけでなく本体重量を押さえることができる。スタイリッシュなマニピを作る上で不可欠な要素であった。
様々な形状のバネ・構造が思考された。マニピュレーターが起きているときに力が弱く、寝ている時に最大の力を発揮する。しかも、その荷重も広い範囲でバランスさせ、耐久性を持たせる。そこまでは計算である程度出すことができるが、いざ試作をしてみるとバネの擦れる音が・・・。
バネの形状、すき間の考え方、加工物それぞれの最適化を図ることでクリアできた。
Liteのフレームにマニピを載せれば良いと言う上層部の意見は、簡単な様に聞こえたが、内容物がほぼ一緒である上で強度を保ったまま軽量化。
どうせやるならマニピでファイバータイプの軽快感が欲しい。他社のマニピはどうあれ、30Kgでは重く感じるだろうということで目標は25Kg。03SIISPの42Kgに対し40%ダウンである。しかし、Liteのフレームにはマニピュレーターを支えるだけの強度はない。
従来しっかりしたフレームにレーザー発振器や光学部品を載せていたのだが、発想を変えて、光軸に関わる部分とフレームを切り分け、フレームに掛かる力を光学部品に伝えないように浮かせるようにした。そうすることで必要以上にフレームを強くする必要が無くなり、総重量25Kgを達成。さらに、その構造はマニピュレーターに力が掛かっても、光学部品に力が加わらず逃げるようになり、光軸のズレ難さにも貢献している。
なんと言っても集光特性の良いマニピはシャープさを追求したい。
スポット径がΦ0.4→Φ0.15と、細く絞ることで、03SIISPと同じ出力のエネルギー密度を比較すると約7倍の値が得られた。より蒸散性が上がり、低出力でシャープに切開、出血も防ぎ凝固層も最小にする事が可能となった。
また、ハンドピースを離した際のデフォーカス具合も従来の物に比べ、拡がりが大きく狭い口腔内での使い勝手が向上、さらにプロフェッショナル仕様ということで最高出力も7Wまで上げた。より幅の広い治療に、効率の良い治療を行うことができるようになった。
よりシャープで高出力、コンパクトでスタイリッシュなプロフェッショナルの為のマニピュレーター型CO2レーザー装置それが「オペレーザーPRO」です。
このオペレーザーPROには開発者だけでなく、生産に関わる各部門や協力会社の方々の「最高のレーザー装置を作るという想い」が詰まっています。ぜひ、PROをさわって実感してみてください。